ご挨拶

「ゼンショー 東京大学・ベトナム国家大学ハノイ校 日本研究拠点プログラム」は、株式会社ゼンショーホールディングスからのご寄付に基づき、ベトナムにおける若手日本研究者の養成を促進するため、東京大学大学院総合文化研究科(以下総合文化研究科)とベトナム国家大学ハノイ校附属人文社会科学大学(以下人文社会科学大学)及び同附属日越大学(以下日越大学)との間で、2011年に設けられた支援プログラムです。

ベトナムにおける日本研究は、1990年代の初頭まで両国の学術交流が著しく限定されていたこと、その後も経済的な理由により、日本語を解し、日本語資料を駆使した研究を行う条件が整っていなかったことから、これまでは、日本以外の地域もカバーする研究者が、主として英語やロシア語、中国語などの外国語資料に基づく概括的な紹介をするにとどまっており、また研究分野も現在の経済動向に重点が置かれてきました。日本語資料を用いた日本研究はまだ数えるほどしか現れていません。

このような状況を改善し、研究領域の多角化と、研究者の日本語能力の強化による研究内容の深化を図るために、日本とベトナムの双方の日本研究者が協力して、このプログラムを立ち上げました。 2011年度から2015年度にかけては、人文社会科学大学大学院アジア学専攻修士課程で日本研究を専攻する修士課程院生を主な対象にし、以下の内容からなる支援を実施しました。

(1)9名を総合文化研究科の大学院特別聴講学生として半年から1年間受け入れ、それぞれの問題関心に即した大学院の科目を、日本語を解する東京大学の大学院生と肩を並べて履修させた。
(2)院生と学部生延べ59名を1週間程度総合文化研究科に招き、短期研修を受けさせた。
(3)総合文化研究科の教員6名を人文社会科学大学に派遣し、日本研究に関する専門的なトピックについて日本語で直接講義を行った。

その結果、プログラムに参加した10名の学生が日本語で修士論文を提出し、社会に巣立っています。

2016年からの第2期プログラムにおいては、第1期の経験と、2016年に新たに開学した日越大学に地域研究プログラム日本研究コースが設置されたことを踏まえ、新たに以下のような支援プログラムを実施しています。

(1)日越大学で日本研究を専攻する修士課程院生に対し、2年間の研究支援金を支給して、生活上の不安なく研究に専念できるようにする。
(2)日越大学に総合文化研究科と人文社会科学大学の教員が出講し、日本研究の専門科目について日本語で直接講義するほか、担当教員による合同ゼミの定期的な実施によって、ベトナムでは例がないゼミナール形式の研究指導体制を定着させ、院生の主体的な問題関心を育てる。
(3)日越大学修士課程2年目で必修科目になっている「インターンシップ」に対応して、日本研究を専攻する院生を総合文化研究科に大学院特別聴講学生として4か月間受け入れる。

このような試みによって、日本をより肌で感じ、日本語による直接的な日本理解をふまえた新しい日本研究の潮流を生み出すことが、わたくしたちの目標です。

このプログラムのため、わたくしたちは人文社会科学大学に「日本研究拠点」を設置し、日本への留学情報をはじめとする最新の知識・情報を提供するとともに、広領域をカバーする日本語の基礎文献を配置して、日本研究を志す学生たちに早くから高度の問題関心を養ってもらえるようにしています。所蔵書籍は、2015年までに713冊に達し、ベトナム国内で最大規模のオープンな研究環境を整えています。

このプログラムは、株式会社ゼンショーホールディングスの全面的な支援によって設けられ、ベトナムに日本研究の新しい種をまき、芽を育てることができていますが、より実り多い成果を上げるためにも、広くこのページをご覧いただいたみなさまがたからご助力とご指導をいただきますよう、心よりお願い申し上げます。